ネントレはどのくらい泣く?効果はある?生後何ヶ月からOK?の科学的根拠
ネントレ(スリープトレーニング)を行う時、子どもにとってトラウマにならないか、どのくらい泣くのか?効果があるのか、心配になりますよね。
ネントレについては、世界中で以前より議論がされていて、医学的な研究も進んでいます。
今日は、ネントレの根拠について解説。
トレーニングを行うかどうかを検討するときの一つの判断や不安解消の材料として、科学的根拠(学術論文)の一例を取り上げてご紹介します。
目次
そもそもスリープトレーニング(ネントレ)とは?
子どもの睡眠トラブルの要因となっている習慣、環境、行動を変える、薬物治療ではない方法で、睡眠改善を図ることをBehavioral Sleep Intervention と呼んでいます。
その中で寝かしつけの習慣を変えるために広く取り入れられている行動的な方法は、2種類。
①段階的消去法(消去法)
保護者の寝かしつけと睡眠の条件付けが強くなり、夜中の自然覚醒の度に保護者の寝かしつけが必要になっている場合に導入するもので、日本では例えば、ファーバー式、タイムメソッドと呼ばれています。(SLSやキャンピングアウトは、トレーニングにかける日数をコントロールしますので、対象としません)
詳しくは、「根拠に基づくネントレ解説~ファーバーメソッド、タイムメソッドetc…段階的消去法」
②睡眠制限法
ベッドタイムフェイディングのように、睡眠を制限し眠気を高めて、寝る前に泣く時間を作らず、入眠と親の介入を関連付けないようにするもの。
詳しくは、「泣かせないネントレ~ベッドタイムフェイディング(睡眠制限法)」
今回は、いわゆる「泣かせるネントレ」と呼ばれる、①行動療法的な考え方を取り入れた段階的消去法(消去法)の効果と安全面についての研究をご紹介します。
ネントレの効果
ネントレの効果についての研究についてのシステマティックレビューやメタアナリシスなどが多く行われています。
ミンデルらは(2006)米国小児学会のタスクフォースで行われた52の研究についてのシステマティックレビューで、段階的消去法・消去法だけではなく、予防的な親への教育(睡眠の情報提供)、ルーティーン、睡眠制限法など、エビデンスに基づいたBSIは子どもの睡眠の改善に有意であると報告しています。
Mindell JA, Kuhn B, Lewin DS, Meltzer LJ, Sadeh A; American Academy of Sleep Medicine. Behavioral treatment of bedtime problems and night wakings in infants and young children. Sleep. 2006 Oct;29(10):1263-76. Erratum in: Sleep. 2006 Nov 1;29(11):1380. PMID: 17068979.
また、日本でも羽山ら(2011)は、行動科学的アプローチに関する理論や効果について国内外の研究、特にネントレについては米国小児学会の報告をなどから、以下のように報告しています。
行動科学的なアプローチのうち,寝渋り,夜泣きを意図的に無視する消去法と,出産後6カ月以内に適切な対応の方法を養育者に教育する睡眠の予防的親教育は,小児の行動性不眠症に対する効果が確実であると示唆された。
羽山順子, 津田彰,(2011)小児の睡眠問題に対する行動科学的アプローチ,久留米大学心理学研究 : 久留米大学文学部心理学科・大学院心理学研究科紀要 (10) 2011
ネントレで寝るまでの時間の変化
トレーニングをスタートして、寝るまでの時間を調べた研究があります。サンプル数も大きく、信頼度も大きい研究です。
乳児にトレーニングをした経験のある親654名にトレーニングの結果についてアンケートを行ったところ、段階的消去法(49.5%) や消去法 (34.9%)、親が部屋にいる(15.3%)の方法を取り入れていました。どの方法にもかかわらず、トレーニング開始時から泣きの継続時間や効果を感じるまでの日数について、以下の結果が得られました。
~研究結果の概要~
・42.2%の回答者が1日目のストレスが大きかったと答え、1週間後のストレスが高いと答えた5.2%を大きく上回った。
・子どもが泣いた時間は、一般的に初日の夜が最も長いと答えたのが約半数で、泣いている時間の中央値は43分。1週間後の泣いている時間の中央値は8.54分だった。
・初めてのトレーニング導入で「成功した」と答えた割合は73%で、完了までの日数の中央値と最頻値は7日だった。
ほとんどの回答者がトレーニングに成功し、1 週間後までに子どもの夜泣きが大幅に減少し、2 週間以内に成功したと報告しました。
トレーニング経過に注意!
この結果を考えると、トレーニングをスタートして、1週間経っても寝る前の泣きの長さが減らないなど効果を感じにくい場合は、寝られない原因は入眠の癖ではない可能性があります。
スケジュールや環境などが整っているか、トレーニング方法が合っているかを確認するためトレーニングをストップしましょう。
ネントレは何カ月からOK?
トレーニングの効果の信頼度の高いエビデンスがあるのは生後6か月以降。生後6か月以下の赤ちゃんへのトレーニングはどうでしょう。
ネントレ(段階的消去法)は、生後4か月からOKとされている記述も見られますが、原則は生後6か月以降から。その理由は、
~トレーニングが生後6か月以降とされている理由~
①寝返りや寝返りがえりなど自分で寝ている間の姿勢を安全に、快適に保つ能力が発達する
②心理的な発達で「物の永続性」が認識でき、保護者が見えていたり触れたりしなくても、「保護者の存在」を意識できる
③体内時計・日中の睡眠のリズムが確立し、スケジュールが原因での夜の睡眠の不安定さが減らせる
④夜間授乳の必要性が減ってくる
つまり、生後6か月以下では、入眠と親の介入の条件付け以外の理由で起きている可能性が高く、トレーニングでは、その覚醒はなくすことができません。また、トレーニングの効果もなかなか現れないのです。実際に、生後6か月以下でのトレーニングの効果を調べた研究(システマティックレビュー)※では、
~生後6か月以下でのトレーニングの効果~
生後6か月以下での有効性は確認されていません。
生後6か月までの行動的介入(ネントレ)が、乳児の泣き声を減少させ、その後の睡眠トラブルを予防し、産後うつ病を予防することは示されていない。
さらに、母乳育児が早期になくなったり、母親の不安の悪化、保護者と別の部屋で寝る場合にはSIDSのリスクの増加など、意図しない結果を招く危険性がある。
とされています。
まとめ
●トレーニングは、生後6か月以降の赤ちゃんの入眠の癖による睡眠トラブルを軽減する。
●トレーニングで泣く時間は1日目が最も長いが、その後1週間後までに著しく減少することが多い。
●生後6か月以下の赤ちゃんには、泣きを減らしたりその後の睡眠トラブルを予防する効果はない。
クークールナでは、お子様の睡眠トラブルの原因により適切な改善方法とステップをご提案しています。
- トレーニングはあくまで選択肢の一つです。
- トレーニングをお考えの方には、トレーニングの必要があるか、トレーニングでの改善の可能性がある場合には、親子の負担を最小限にするための準備から方法、安定までのサポート。
- トレーニングをお考えでない方には、トレーニング以外の習慣の改善(スケジュール・環境)で目指せる睡眠の状態をお伝えしたうえで、サポート。
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